History of The Washer

本質的な問題として取り上げられてきた。ワッシャーというパーツは、華やかで革新的な機械技術ではないかもしれないが、重要な役割を担っていることは確かだ。17世紀には木造馬車の車輪や航空機の翼などのボルト締結体を固定するために、ワッシャーが使用されていた記録が残っている。

人類と同じくらい古くから存在する。 2本の棒を 、あ る い は 棒 と 石 を 組 み 合 わ せ る よ う に なるまで、それ程長い時間はかからなかっただろう。必要性を感じるだけでなく、それを実現するための方法を見つける事も、随分古くから工夫されていたのであろう。

何千年もの間、原始的な紐やロープは、道具 や武器、そして原始的な建物やいかだなど、さまざまな建造物を作るために好んで使われてきた。 新石器時代の人間(紀元前9,000年~紀元前5,000年頃)は、動植物の一部を含むいわゆる「新石器時代の材料」を最大限に利用 し て い た は ず だ 。

その後、木工や建具の進化により、様々な工夫を凝らした締結体が生み出された。接着剤とダボや釘などの簡易締結剤も重要な開発物であった。

Bolted_2022_2_Article_History_of_Article_Image_1200x1370.png

ワッシャーの起源

ワッシャーの使用と開発は、ねじ式鋼製のボルトやボルト締結体と密接に関係している。しかし、工学の祖先がボルトやねじ継手にワッシャーのようなもの を付けることにいつ気が付いたかは分かっていない。

諸説あるが、ねじの発明は紀元前400年頃まで遡ることができる 。 そ の 技 術 は 例えばプレス機にも活かされていた。この発明 は 、エジプト人あるいはロ ーマ人によるテーパーねじ開発の端緒となり、木工の締結体やその他の締結に革命を起こすきっかけとなった。

諸説あるが、ねじの発明は紀元前400年頃まで遡ることができる。 その技術は 例えばプレス機にも活かされていた。 この発明は、エジプト人あるいはローマ 人によるテーパーねじ開発の端緒となり、木工の締結体やその他の締結に革命を起こすきっかけとなった。

 

ワッシャーがどう使用されてきたか

ボルト締結体に関する「ワッシャー」の語源も、時の流れの中でその由来が分からなくなっているが、この用語は、1346年の文書に記載がある。 また、1611年の資料には、「大砲のアクスルハブの摩耗を低減する」という用途が記載されている。現在のワッシャーの用途を考えると、ワッシャーの発明の手がかりとなる。

動物が馬車を引いていた時代には、大きな車輪の問題であったであろうボルトの緩みを防止し、摩耗を抑えることが主な用途であったと考えられる。その他にも、荷重をより大きな面積に分散させるスペーサーとして、緩み止めとして、振動を抑える、液体から保護する、などの現代的な用途が挙げられる。

現在では、ワッシャーの種類、材質、表面処理 、コ ー テ ィ ン グ 、サ イ ズ な ど 、非 常 に 多 く のバリエーションがあり、その多くは特殊な用途に対応している。代表的なワッシャーの用途は以下の3つのグループに分類することができる。

  • 平座金 : 荷重を分散させ面圧を低減させることにより摩耗を防止する。
  • スプリングワッシャー: 軸方向のスプリング効果を利用してボルトの緩みを抑える。
  • ロックワッシャー : ボルトやナットの回転緩みや非回転緩みを防止する。

 

最も効果的なロック方式の出現

ボルト締結体の緩みを防止するためには、接着剤や各種ナットなど、ワッシャー以外の方法も存在する。ロックワッシャーは、皿ばね(ベルビルやディスクスプリング )、ウェーブワッシャー 、スプリットワッシャー / スプリングワッシャー 、歯付きロック/ 鋸歯付きワッシャー 、タブワッシャー 、ウェッジロッキングワッシャーなど、様々な種類が試行されてきた。

中でもボルトの緩み防止に最も効果的とされているのが、ウェッジロッキングワッシャーだ。特許出願は20世紀初頭から行われているが、ノルトロックが設計に磨きをかけ商品化したのは1980年代に入ってからのことである。

 

ノルトロック ワッシャーの歴史

1953年からオイルバーナー、ホースリール、マイターソーなどの工具を扱ってきたスウェー デンの会社ノベックスは、1960年に生産拠点をマットマー(ストックホルム北西約600キロメートル)へ移転した。同社は1982年にウェッジロッキングワッシャーの特許を取得し、 ノルトロックブランドとして製造を開始した。

創業者ベングト氏とメアリー・ペアソン氏の息子で、26年間ノルトロック社のCEOを務めたカ ー ト・ ペ ア ソ ン 氏 は 、ウ ェ ッ ジ ロ ッ キ ン グ ワ ッ シャーの開発に積極的に取り組んできた。 彼は当時を振り返りこのように語った 。

 ワッ シ ャ ー の ビ ジ ネ ス に 参 入 す る 事 は 、奥 が 深い底の見えない海に飛び込んだようなものと言えるかもしれません。なぜなら、当初我々はプレスや焼き入れ、表面処理の事など、何も知ら な か っ た の で す 」

「ただ判っていた事は、このワッシャーの基本的な機能のアイディアは素晴らしいものだという事だけでした」と、彼は続ける。「しかし同時に、当時取り扱っていた製品とは、素材もデザインも違い過ぎたため失敗の連続でした。そのため、全てを投げ捨てて文字通り振り出しに戻らなけれ ばなりませんでした」

 

ウェッジロッキング機構の完成

ノベックスは、技術者を雇いウェッジロッキングワッシャーの設計をやり直し、時間をかけて社内で設計・製造の技術を高めていった。 ペアソン氏は次のように語る。

「私たちがワッシャーの基本的なウェッジロッキング機能を完成させると、次の開発・改良時には、耐腐食性、耐熱性、耐酸性などの新しい素材、サイズ、表面処理に重点を置き始めました」

それ以来、地道に継続的な改善と専門化に重点を置いてきた。ノベックスにとって、生産技術の改善と機械の再設計は、生産量が増えても高い品質を確保するためには、非常に重要なことであった。また、製品に対する綿密な試験は、昔も今も高く均一な品質レベルを維持するために不可欠である。

1984年ノベックスは最初のサプライヤーとして、ステンレス製ウェッジロッキングワッシャーの最初のサプライヤーとして製品の提供に成功した。「製品の堅牢性と耐食性が大きく向上しました」とペアソン氏は言う。発売前にはワッシャーに塩水噴霧試験を実施した。

同社はその1年後、2枚1組のワッシャーを誤使用防止のため一つ一つ糊で接着したウェッジロッキングワッシャーの提供を開始した。この開発は、製品の品質を維持するだけでなく、顧客の組み立て作業を簡素化することに大きく貢 献する。

 

堅牢な生産体制と製品範囲の拡大に注力

2001年ノベックスはノルトロックに社名を変更し、ウェッジロッキングワッシャーの世界的な販売に特化したビジネスの展開を開始した。2003年、同社は海水や塩化物254SMO®や、高温用途、腐食環境用のニッケル基合金などの特殊合金製ウェッジロッキングワッシャーを発表した。

2007年にはマットマーに新しい硬化・表面処理 ラ イ ン を 設 置 し 、デ ル タ プ ロ テ クト®コ ー ティングを導入した。無電解加工皮膜の変更により、硬さの更なる調整に成功し、遅れ破壊のリスクを大幅に軽減し、12.9グレードなどのハイグレードボルトとの相性を向上させた。

2011年には完全なトレーサビリティを保証するた め 、す べ て の ワ ッ シ ャ ー に レ ー ザ ー マ ー キ ン グを導入、2012年には、ノルトロックXシリーズワッシャーの大規模な開発を行った。Xシリーズは、独自のウェッジロッキング技術と革新的な弾性(スプリング)効果を組み合わせている。 これにより、通常の振動などで引きおこる回転緩みの防止はもちろんの事、締結距離が短い場合や、複数の相手母材を同時に締結する場合、ガスケットが挿入されている締結、軟質金属、プラスチック複合材、塗装面、熱サイクルが生じる環境等において発生するなじみ等による非回転緩みによる軸力損失を防止。回転緩みと非回転緩みを一つのソリューションで解決できる世界で唯一の画期的な製品の開発に成功した。

現在マットマーでは、数百種類のワッシャーを製造しており、顧客の要望に応じた特注品にも対応しているだ。生産能力の拡充、コア製品やプロセスの継続的な改善、新しいワッシャ ー や ナット・ボ ルトと 組 み 合 わ せ た コ ン ビ製品による製品範囲のさらなる拡大に重点を置いてきた。

2021年、ノルトロックグループは、世界中の顧客の需要が高まる中、長期的な生産能力向上及び持続可能な製造を可能にする為に、マットマーの工場の近代化と拡張工事により、更なる進化 を 遂 げ て い る 。

 

ワッシャーの将来的な可能性

ボルト締結の軸力を遠隔監視するために、センサーなどを活用したスマートテクノロジーに多くの関心が寄せられている。弊社では、スーパーボルトLSTやスーパーボルトLSFなど、多くの製品の開発に成功しており、既に鉄道や洋上風力などの産業において最も重要な締結部の監視用に使用されている。

しかし、ノルトロックグル ープ のビジネスデ ベロッパ ー、スマートプロダクト兼サービスのピエール・ケルナーは、ボルト締結業界に既存の多くのスマート製品は、ボルトやスタッドの伸びを監視することで軸力を測定をしていると指摘する。スマートワッシャーも存在はするが、従来のワッシャーよりはるかに多くのスペースを必 要 と す る た め 、あ ま り 好 ま れ な い 。

「ノルトロックワッシャーは、軸力を測定しませんが、ウェッジロッキング機能は経年変化による軸力の減少をなくすように設計 さ れ て い ま す 」と ピ エ ー ル は 言 う 。

また、「ピエゾ電気結晶を極薄のワッシャーに搭載する実験的な使い方もありますが、商業規模での使用にはハードルは高く、インダストリー4.0からよりも直接的なチャンスは我々の製造工程にあると感じています。自動検査の導入、無駄の削減、プロセス全体に統合されたデータによるスピードの向上など、ワッシャーの生産効率と品質を向上させることができるかも知れません 」と 、彼 は 付 け く わ え た 。

 

ウェッジロックワッシャー

摩擦ではなく張力を利用して物理的にボルト締結体を固定するウェッジロッキングワッシャー。片側にカム面、もう片側に放射状のセレーションが付いた2枚1セットの緩み防止機能付きワッシャー。ウェッジロッキング効果により、振動や衝撃によるボルトの回転緩みを防止する。この技術について詳しくはこちら