研究開発
「弊社にとってのメインの課題は、締結部材の軸力を継続的に監視することでした」とミヒャエル氏は付け加える。レボテックでは機械、電気、土木の各分野の専門エンジニアで少人数のチームを作っている。ヨアヒム・ムイク氏もその一人で、4年間の研究プロジェクトでボルトの軸力検出のための2つのプロトタイプ・ソリューション、REVO m-BoltとREVO e-Boltの開発を担当している。
ヨアヒム氏はÖBBが求めていた継続的なモニタリングは特に難しい課題であると考えていた。「軸力を実際に測定できるナットやボルトの設計には膨大なノウハウがありますが、ボルトにインターネットを接続するのはもっとずっと困難なことです」
解決策
レボテックのコアビジネスはコンサルタント業だ。ミヒャエル氏がイノベーションを渇望している限りは、コラボレーションする最適なパートナーを探し出すことにおいて妥協はしない。ミヒャエル氏は自社での開発に加え、オーストリアのノルトロックグループセールスエンジニアであるトーマス・シャルダックスとのつながりにより、継続的な軸力モニターのためのノルトロックグループのインダストリー4.0ソリューションであるスーパーボルト・ロードセンシング・テンショナー(LST) の存在を知ることになった。
ドイツのラウフハイムにあるノルトロックグループのオフィスで何度かの話し合いと知識の共有が行われた後、両社はÖBBの問題に共に取り組むことに合意した。当初、ヨアヒム氏はスーパーボルトLSTが従来のナットと全く違うことに驚いていたが、使用してみてすぐにその効果を実感した。
スーパーボルト・マルチ・ジャックボルトテンショナー(MJT)は、大径ボルトの締結に掛かる大きな軸力をナットボディにぐるりと配置されたジャックボルトに分散させる。例えば、通常のM16ボルトを80 kNの軸力で締め付けるには、200 Nmのトルクが必要だ。ヨアヒム氏は、「スーパーボルトは各ジャックボルトに12Nmしか必要なかったので、はしごに立ちながら狭い場所でも作業ができました」と語る。
軸力モニタリングの未来
容易に設置することはできる。だが、このイノベーションの核はいかにスマートテクノロジーでプロジェクトを完成させたかにある。ノルトロックグループのスマート製品担当ビジネスディベロッパーであるピエール・ケルナーは、リヨンの同僚ダミアン・トーマス、ヨーテボリにいるパートナーのリサブと共に数百キロ離れたそれぞれのオフィスのデスクから、最初のインストレーションにライブストリーミングによりリモートで立ち会うことでヨアヒム氏をサポートした。
「遠隔地への旅行制限がある中、ヨアヒムのスマートグラス“マイクロソフトホロレンズ”で、現場にいるヨアヒムと一緒にその場に“立ち会う”ことが実現しました。ヨアヒムは、スーパーボルトのMJTのインストールを経験したことがなかっただけでなく、当社のスマートソリューションを導入したこともありませんでした。しかし、今回このリモート接続によって私たちが“彼の目”となり、彼の手を使って作業を進めることができました。全てを記録することができるので、メモを取る必要もありません」とピエールは言う。
スーパーボルトLSTを設置すると、正確な軸力値を遠隔地から継続的に読み取ることができ、世界のどこにいてもウェブインターフェイスから確認することが可能だ。
「この技術を使えば、軸力があらかじめ設定された限界値を下回ったときに、自動的に顧客に通知することができます」とミヒャエル氏は説明する。
「最初の締め付けから72時間以内に軸力の低下が検出され、その後1年間のモニタリングでも軸力の低下が検出されました」とミヒャエル氏は続ける。この情報によりÖBBのようなスーパーボルトLSTの使用者は、増し締めやボルトのメンテナンスの最適な間隔を設定することができ、レボテックのようなインフラにかかわる顧客支援事業を専門とする企業にとっても非常に貴重な情報となる。
産業におけるデジタルツールの持つポテンシャル
「ポテンシャルは非常に高いです」とミヒャエル氏は言う。彼は、産業インフラ企業にとって予知保全の重要性がますます高まっていくと感じている。レボテックのビジョンの一つは、ケーブルや電源がなくてもデータを記録できることだ。列車自体が線路上の全てのスマート製品のデータを記録し、中央のデータベースに供給することで、列車のオペレーターがメンテナンススケジュールを計画できる仕組みだ。
「機会は無限にあります。単純な締め具による防音壁から、タービンや加圧アプリケーションなどの高レベルのアプリケーションまで、この技術は幅広くどこにでも使用することができます。」とヨアヒム氏は言う。
「現在、私たちがテレビや暖房、掃除機などのホームアプリケーションに接続しているのと同じように、産業界においても重要な部品へのリモート接続が
始まっていくと思います」
デジタルツールを使用することで、実際にその場にいなくても、遠隔地からより高度なレベルのメンテナンスが可能になることは利便性に非常に優れている。