CIS諸国の鋼業における事業機会
物価の上昇、低インフレ、そして依然として不安定なロシア経済の継続的な回復は、鉱業や石油、ガスなどの産業に製品やサービスを供給する企業に新たな機会が開かれていく過程にあり、その他のCIS諸国でも同様の回復が進んでいます。
1991年にソ連が崩壊して以来、CIS諸国と呼ばれる国々(ページ下部参照)の鋼業は速度を上げて成長しました。ロシア、カザフスタン、ウズベキスタンなどの国々は天然資源が豊富であり、鋼業はこれらの地域の国々にとって重要な収入源であることを意味します。
ロシアの多くの国の企業が石炭、ニッケル、金、銀、亜鉛、鉄、ダイヤモンドを採掘しています。ウズベキスタンは金と銀だけでなく、ウランの大規模な堆積物を所有しています。キルギスも同様ですが、鉱業はウズベキスタン程発展していません。カザフスタンでは銅と亜鉛の二つの最大の堆積産業を民営化しましたが、銀やその他の地金は利用可能です。
鉱業の近代化
近年、CIS諸国の鉱山の多くは、地域外からのサプライヤーを使うことにより近代化されてきています。国内のサプライヤーから入手できるものの多くは、時代遅れで結果的に生産性が低いものです。近代化に対する取り組みは、急成長する石油、ガス産業からの再投資による利益を通じ可能になった部分があります。
この地域全体としての焦点は、西ヨーロッパと米国からの機器への切り替えだけではなく、製品を抽出し、生産性を向上させ、ダウンタイムを削減するための新しく革新的なプロセスへの切り替えにありました。巨額な設備投資であるため、アフターマーケットサポートも重要な要因となります。
現在、CIS諸国の経済の上昇は、主にロシアの成長に依るところが大きく、地域全体の名目GDPの80%以上を占めています。この開発は、個人消費の増加と原油価格の上昇によって促進され、ロシア財務省は5月に2018年度予算を修正し、2011年以来初めて財政黒字の予測を立てました。
成長速度を上げるCIS経済
この地域での開発を直接みているのが、NEVABマイニングソリューション社のコンサルタントであるミルトン・ダンバー氏です。東欧や中央アジアで20年以上の経験を持ち、ボルボ・トラックやサンドビックなどの大企業を代表し、15年以上に渡りCIS地域に拠点をおいてきました。彼の主な分野は、鉱業、石油、ガス、建設といったこの地域での主要産業になります。
「いくつかの巨額な投資プロジェクトにより経済の活性化がスピードをもって進んでいることを実感します。」ダンバー氏はそう言います。「農業やパルプ、製紙などその他の重要な産業も存在する中、CIS諸国にとって、鉱業、石油やガス産業は大きな焦点分野です。」
ダンバー氏のCIS地域での豊富な経験によると、現在、この地域での鋼業における動向は、生産性、安全性、持続可能であることにあるといいます。
「鉱山で使用する機器等においては高い生産性を提供できることが重要であり、これを達成する一つの方法は、ハードウェアをソフトウェアにリンクさせることによるデジタル化が挙げられます。」とダンバー氏は言います。「この目的は、生産フローをできる限り無駄なくし、計画外の停止を無くすことです。これは、資本が集約されている全てのあらゆる種類の大型の機械、クラッシャー、スクリーナー、ドリルリグ、ローダー、コンベアシステムなどにおいて言えることです。自動化とデジタル化にが急速に進んでいる業界においては、機械の故障にかける余地はありません。」
安全性の向上への強い思い
また、鉱業は作業に危険を伴う産業であるため、事故が起こらないよう、安全性と労働条件の改善にも大きな重点がおかれています。鉱業業者は、計画外の生産停止を回避できるための機器や機械、技術ソリューションに更なる投資をしたいと考えています。
「鉱業において長い経験を持つスウェーデン企業にとって、安全性向上のための革新的な製品、機器、ソリューションを提供する絶好の機会です。」と、ダンバー氏は言います。「生産や機械の停止をなくすためには、高品質の機械や機器を選択することが更に重要になります。」
持続可能性は、世界中で最優先事項ですが、CIS諸国においても優先すべき事項です。鉱業における環境負荷を低減する一つの方法は、エネルギー効率を上げることです。これは、同時に鉱業業者のコストの削減にもつながります。
「鉱業において地下換気を開発するプロジェクトに携わっています。これは通常、かなり自動化されているシステムで、オン・オフボタン以外の機能を備えています。センサーとワイヤレスシステムにより機械や機器は相互に統合され機能できるようになっています。例えば、省エネを実現したい場合には、鉱山に誰も人が降りていないときは、換気システムをフルで稼働させない。これは自動化されるべきで、例えばディーゼルトラックが鉱山を降りて行っているときには、換気システムは急速に作動し、逆にトラックが鉱山を離れるときには、減速する、といった具合です。つまり、いつもフル稼働の換気システムは必要がないわけです。」と、ダンバー氏は言います。
この地域には、多くの機会があり、同時に課題も存在します。ダンバー氏は、CIS諸国へ進出する企業に対しいくつかの提言をしています。
「CISは、課題のあるチャレンジですが、素晴らしいポテンシャルのある地域です。」
「まず第一に、忍耐が必要となります。」と彼は言います。「公正な行動、行動規範などに関しては、厳しい規則の必要性があることを強調します。誤解の発生や、汚職、差別への関与を避けるため、最初にこれらの規則を設置すべきでしょう。CIS地域への進出は、様々な課題があるチャレンジですが、素晴らしいポテンシャルがある地域ですので、参入しないのは大きな間違いだと私は思います。」
CIS諸国について
独立国家共同体(CIS)は、加盟国9か国、準加盟国1か国の政治的、経済的な政府間組織であり、全ての国がユーラシアに位置する旧ソ連共和国である。1991年のソ連崩壊後の設立されました。加盟国は、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニア、モルトバ、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタンです。トルクメニスタンは、客員参加の状態で、ウクライナは2018年5月までは、正式メンバーではない状態のまま参加をしていました。総人口は、2億8,200万人(2017年)、総GDPは5.4兆米ドル(2016年)と推定されています。CISは超国家的な権力を持つものはほとんどありませんが、純粋に象徴的な組織以上のものを目指し、名目上は、貿易、金融、法律、安全保障の分野で調整する権力を持っています。