Coupling Challenges & the Evolution

カップリングは多くの重要な箇所に存在し、その締結部の固定は最重要課題に挙げられます。その課題の重要さは設備機器の大型化に伴い、日々厳しさを増しています。

カップリングは、工業自体の歴史と同じくらい古くから用いられており、例えばシャフトを何らかの方法で接続する必要のある、原始的でシンプルな紡績工場や風車のような設備でも使用されていました。しかし、1884年に蒸気タービンが発明されると、シャフトの接合は、発電業や造船業等で重要になって来ました。タービンや貨物船舶が大型化するにつれ、締結部に必要な軸力やカップリング部にかかる軸回転荷重も大きくなって来たのです。比例してシャフトの接合やカップリング締結に求められる必要条件も厳しさを増し、カップリング部のボルト締結においてはボルト自体に対する要求水準も、非常に高まって来ました。

ボルト接続カプリングの分野で30年以上の経験を持つ技術者であるマーティン・ウォルシュ氏は、「発電業や海洋産業においては、カップリングは古くから頻繁に使われていたものの、これまで大きな進化は起こりませんでした。60~70年前のカップリングを見ると、設計やコンセプトは現在のものと大差ないことが分かります。しかし、その背後にある技術は大きく進化を遂げました。特にカップリング締結に使用されるボルトが大幅に進歩し洗練されたおかげで、より小型のカップリングで、より大きな軸回転荷重を伝達することができるようになりました。」

カップリング締結の最も重要な役割は、シャフト位置を保持することです。海洋産業で使用されるシャフトは通常、低速で回転しますが、シャフト位置の保持がままならない場合は振動が発生し、ベアリングに不必要な負荷がかかります。

ましてや発電産業では、シャフトの回転速度は3,600rpm(1分あたり3,600回転)にも及び、例えわずかでも振動や負荷の偏りが発生すると、タービンは全速回転できなくなるため、シャフト位置の保持は極めて重要な課題です。こういった理由から、シャフト位置を確実に保持するという課題には、多くの時間と労力が費やされて来たのです。

ウォルシュ氏によれば「一旦シャフト位置を決めてしまった後は、ボルト締結によってシャフト位置を確実に保持したまま設備を稼働させる必要があります。将来的にはどこかの時点でボルトを外し、シャフトの取り外しを行うタイミングがあるでしょう。ボルトを元通りに取り付ける際、すでにシャフト位置の調整と保持に多くを投資して来た方々は以前と全く同じ状態に正確に戻したいと思うでしょう。」

過去、長年に渡り、最も多く用いられて来た締結方法は、標準的な通しボルトを用いたものでした。比較的安価で入手でき、すぐに使用できるからです。シンプルに1本のボルトをねじ穴に挿し入れ、反対側をナットで締め付けて摩擦で固定するのです。

しかし摩擦で固定されているだけでは、カップリング部が伝達できる軸回転荷重には限りがあり、巨大な軸回転荷重に晒されると滑りが発生し、シャフト位置が保持できなくなります。そしてそこから発生する微細なズレや負荷の偏りは、ボルトとフランジ穴の損傷を引き起こしてしまう可能性があるのです。一旦そうなってしまうと、カップリングを組み直し、シャフト位置を再度確保し直さなければなりません。

理論上、穴の隙間を埋めるリーマボルトを使えば、カップリング部を通して伝達できる軸回転荷重はより大きなものになります。なぜなら、軸回転力はボルト軸に対してせん断方向に伝達されるからです。しかし実際には、ボルトは締め付けられると伸びが発生し、その分径が小さくなってしまうため、ボルトをぴったりと穴にフィットさせることは困難です。結果、ボルトとフランジ穴の間に隙間が発生し、カップリング間の滑りやボルトの疲労破壊と同じ問題が発生することになるのです。

この点にニーズがあるため、新設時のシャフトの位置決めや保持の際、また取外し後の再取付時にも、スーパーボルト EzFit(イージー・フィット)が採用されるケースが増えて来ました。EzFitはテーパードスリーブがフランジ穴内部で拡張する独自の機構をもっているため、隙間を作らず荷重を均一化することができます。また、再取付を行う際にズレや滑りがなくなることで、シャフト位置も原状通りに確保されるのです。

「恐らくEzFitは、締結の精度において過去30年間で最大の進歩です。メリットが多く、デメリットは少ない。取り付け・取り外しが容易で、ボルト穴にも高精度でフィットします。シャフト位置を確実に保持することが可能で、軸の芯をずらすことなく、再使用性にも優れています。」(スティーブ・ブラウン:ノルトロックグループ エクスパンションボルト担当グローバルプロダクトマネージャー)

カップリング締結を進化させてきた主な要因は、工学的分析の進化にあります。ウォルシュ氏によれば、70~80年前は分析の手立てがなく、カップリングとボルトは過剰な設計で、不必要に大きなものでした。「当時は技術が未成熟で、計算やシミュレーションを行うことができなかったため、同じことが多くの業界で起こっていたのです。」

現代では多くのOEMが温度の影響、異素材の組合せ、稼働環境などをコンピュータモデリングやシミュレーションで予見することができます。回転部のカップリングは非常に複雑であるため、FEM(有限要素法)はウィークポイントの場所や特定の締結環境での許容荷重量を割り出すため、次第に多用されるようになって来ました。

せん断試験も、各ボルト締結環境下における物理的な限界点を把握するために活用されています。

「まだまだ分析の余地は残されています。しかしこれらの分析手法は、旧来のボルトと新しいEzFitとで、大きな軸回転荷重がかかった時にどのような差が出るかを正確に知る上で大きな手掛かりとなるはずで、完璧な有限要素解析が可能になれば、そのメリットは途轍もなく大きなものとなります。特にスペースの関係上カップリングをボルトで締結することは避けたいと考えている風力発電業界等で、ボルトの使用本数の削減やボルト径の小型化が実現できる可能性が生まれるからです。」(ウォルシュ氏)
タービンや貨物船舶の大型化・高出力化が進み、かかる荷重がますます大きくなるにつれ、できる限りスマートで小型のカップリングを設計することは、今後も重要なテーマであり続けることでしょう。

C.A.パーソンズ「タービニア号」

1884年、英国のエンジニアであるサー・チャールズ・アルジャーノン・パーソンズは、世界初となる蒸気タービンを発明した。

彼のタービンはわずか7.5kWの発電能力しか持ち得なかったが、発電の未来を切り開き、船舶の動力源として使用される可能性を見出したのである。1893年にはパーソンズ海洋蒸気タービン会社が興され、この新技術の将来性を証明するため実験船舶「タービニア号」の建造が始まった。この新たな船舶には、3台の軸流タービンが3本のシャフトに取り付けられており、それぞれのシャフトは3つのプロペラを回転させるものであった。タービニア号は翌1894年に竣工し、最大34キロノット(63km/h)を達成して世界最速の船舶となった。当時英国海軍が保有していた最速の船舶でも、27キロノットのスピードがやっと、という時代の話である。

1897年、タービニア号はビクトリア女王のダイアモンド・ジュビリー(在位60年祝賀祭)式典において、海軍閲兵式に予告なく現れ、王室や海軍上官の目前で、その速度と出力を存分に発揮。それから2年後には、パーソンズのタービンは王室海軍に採用されることとなり、時を置かずして大西洋を航行する客船にも使用されることとなった。サー・チャールズ・アルジャーノン・パーソンズが設計した蒸気タービンもすぐに大型化され、十分な電力量を安価で発電できるよう改良された。1899年には、ドイツの発電所で遂に世界初のメガワット級タービンが建造され、サー・パーソンズの存命中に世界中の主要発電所で彼の発明が採用されることとなった。

 

Let's Stick Together

各コンポーネントをボルト締結によって組み上げる工程は、昔から変わらず必要です。これまでは長い間、通しボルトが標準的な締結部材として用いられて来ました。フランジ穴に通して反対側をナット締めし、摩擦力によって締結していたのです。巨大な軸回転荷重がかかるとフランジ間で滑りが発生してカップリングにズレが生じ、その結果ボルトもフランジ穴も双方が損傷します。

EzFitはこれらの問題を解決すべく、新規開発された製品です。フランジ穴内に挿入後、テーパードスリーブが拡張して隙間なくぴったりとフィットします。更にEzFitは、かかる応力負荷も均等に分散し、取り付けや取り外し、再取付も簡単に行うことができます。

 

EzFitは、ねじ穴内部の隙間を確実に埋めてフィットする。

 

 

 

適切なボルトを選択することで、水力発電所のタービンシャフトラインは、負荷の集中と微細なズレから開放された。

 

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