安全のための最善策
壮大な自然の力は、時に恐ろしい脅威となり災害を引き起こし、自然災害は近年増加の傾向にある。自然災害の観点から、橋梁建設や、世界一高い観覧車のような巨大な構造物を設計する際には、常に安全性とレジリエンスを第一に考えなくてはならない。
フェリスホイールと呼ばれる観覧車の先駆者的存在は、17世紀にブルガリアで建設されたものだったとようだが、その当時は、ラスベガスのハイ・ローラーの大きさを夢にも思わなかったはずだ。ハイ・ローラーは2021年まで、世界一高いフェリスホイールとして、ラスベガスのストリップからネバダ州の空に向かって168メートル(550フィート) の高さを誇り、周囲のビルを圧倒していた。直径143メートル (469フィート) のリムには、40人乗りの展望車が28台取り付けられている。30分で一周し、ラスベガスバレーの眺望を楽しむことができる。
新たな高みを目指す
観覧車の名称フェリスホイールとは、1893年のシカゴ万国博覧会のためにジョージ・ワシントン・ゲイル・フェリス・ジュニアが製作した観覧車に由来する。高さ80メートル (264フィート) の観覧車は、当時は、巨大な建築物であったことは間違いない。
21世紀に入り、最も高い観覧車を作る競争が始まった。ラスベガス・ハイローラーは2014年から世界一のタイトルを保持していたが、現在はアラブ首長国連邦の高さ250メートル (820フィート) のアイン・ドバイに抜かれている。
安全を最優先に
これだけの規模のものを作るには、エンジニアリングの専門知識が必要だ。風や地震だけでなく、構造物自体からも巨大な重量や力が発生する。観覧車は、乗客はもちろんのこと、周辺の人や物の安全性を最優先に考えて設計されている。
ラスベガスのハイ・ローラーのオーナーであるシーザーズ・エンターテインメントは、適切な請負業者を探し求め、大規模橋梁など複雑な構造物の設計、建設に長年の経験を持つアメリカン・ブリッジに建設依頼をした。
アメリカン・ブリッジのホームページには、「前例のない技術を必要とする挑戦的でユニークな鋼鉄建設プロジェクトに長年にわたり携わってきた」とある。
「建設エンジニアリング」
アメリカン・ブリッジのエンジニアは、回転するハブに接続されたリムを、直径75ミリメートルのロックド・コイル・ケーブルで作られた112本のケーブル・スポークで固定するというデザインをした。4本のサポート・レッグが存在するが、1本のブレースト・レッグによりサポートを更に強化している。
アメリカン・ブリッジによると、このプロジェクトでは「膨大な量の建設エンジニアリ
ングと手順開発」が必要であった。プロジェクト完了までに300枚以上の図面が用
意された。2211年末にホイールの建設を開始し、2014年3月にラスベガス・ハイローラーが公開された。壊滅的な地震のハイリスクネバダ州は、アラスカや隣のカリフォルニ
アほどではないものの、アメリカで3番目に地震が多い地域だ。カリフォルニアで大きな地震が発生すると、ラスベガスでも揺れを感じる。地震の研究者によると、ラスベガスのあるネバダ州南部も、将来的に壊滅的な地震に見舞われる可能性があるそうだ。
ラスベガス・ハイ・ローラーは、大規模で被害の大きい地震のリスクが考慮された設計になっている。例えば、安定性と安全性を向上させるため、スピンドルの東端に取り付けられたブレースト・レッグは、横方向のサポートを提供する。
ボルタイトでブレースト・レッグを固定
アメリカン・ブリッジは、ブレースト・レッグと基礎をつなぐ16本の等間隔のアンカー・ロッドを締め付けるソリューションを求めて、ボルタイトにたどり着いた。この地域の風や地震の影響を受けないようにしなければならない。ボルタイトは、ブレースト・レッグを固定するための16本のアンカーロッドを締め付けるための完全なテンショニングソリューションを提供した。カスタムデザインのテンショナーも含まれており、全てのテンショナーが1,500 barの圧力で動作し、3,115キロニュートン (kN) の力を出すことが可
能だ。ボルタイトは、テンショナー以外にも高圧空気式油圧ポンプ、油圧ホース、油圧マニホールドを供給した。
このソリューションは顧客にとって二重の利益をもたらすことができる。まず、この装置の使用により、契約で要求されているプレテンション荷重までアンカー・ロッドを張ることができる。そしてまた、アメリカン・ブリッジは、装置の小型化、軽量化、設置の容易さから、アンカー・ロッドの効率的なプレテンショニング作業を実現した。
顧客にとっての多くのメリット
アメリカン・ブリッジは、当該ソリューションを通じて、ラスベガス・ハイ・ローラーの重要な建築物の安全性を、正確さと時間の節約も兼ねたカスタムデザインのボルト締結ソリューションによって確保することに成功した。アメリカン・ブリッジのエンジニアリグ・バイス・プレジデント、ニック・グレコ氏は、「最大の利点は、取り扱いの容易さ、
コンパクトさ、そしてロッドに望ましいレベルのストレスを与えることができる装置の
能力でした」と述べた。