三井造船株式会社（現 株式会社三井E&Sマシナリー）は、船舶の建造だけでなく海運業に関わる広範な製品を世界に供給する伝統ある老舗企業です。1926年（昭和元年）、同社はデンマークのB&W社（現MAN Diesel&Turbo社／ドイツ）と技術提携を結び、以降そのライセンシーとして舶用ディーゼルエンジンを製造、世界中の造船会社に供給しています。同社は累計生産馬力9,000万馬力超、累計生産台数6,000台にも上る世界トップの実績をもつだけでなく、ライセンス製造を行いながらも、独自の技術を加えて製造を行っています。時にはライセンサーであるMAN社から相談を受け、製品の試験運転や仕様改善の提案など共同開発のような形でライセンス設計自体に関わることもあるという点が、同社の技術力を裏付けています。世界トップメーカーとして、どのような想いをもって業務に当たられているのか、三井造船 玉野事業所でディーゼルエンジンの設計を担当するディーゼル設計部 詳細設計グループ課長・稲住元気氏と、課長補佐・内田智氏のお二人にお話を伺いました。

「三井造船では後流の業務が円滑に進行するよう、現場で作りやすい製品づくりを心掛けています。舶用エンジンは使用する部品の数も種類も膨大ですが、工程管理や調達にも独自の工夫を行い、業界ではよくある納期遅れを起こすことなく確実に製品を納めるという点もその1つです。その点ノルトロックワッシャーは、誰でも簡単に取り付けることができ、作業性の改善という点で素晴らしい製品だと思います。」

元々はライセンサーであるMAN社の規格にスペックインされていたことからノルトロックを使用し始めた同社は、その緩み止め性能と作業性の高さに気付き、独自にノルトロックの採用箇所を増やして行きました。例えば、膨大な数のボルトで固定されるエンジンのチェーンケースは、ライセンサーではワイヤーロックで緩み対策を行っていましたが、同社ではこれを全てノルトロックワッシャーに変更しました。「ワイヤーロックは作業者の技量に左右される不確実さがありますが、ノルトロックであれば誰でも簡単に取り付けできるので、作業時間を大幅に短縮でき、確実です。これは作りやすいエンジンを設計するという当社の思想にも非常によく合致しています。」（同社・稲住氏）

また、ノルトロックはあらゆるボルト締結の最適化を目指し、製品の販売だけでなく様々な技術的サポートも行っています。同社の稲住氏は、ノルトロックのサポートについてこんなお話を聞かせてくれました。「足繁く通ってデモを見せてくれただけではありません。私たちがボルト締結がどうあるべきかという点を理解して行く上で非常に助けてもらいましたね。VDIの専門家をお連れいただいたこともあり、お蔭でVDI というものを理解できました。それに基づいた設計や顧客対応も可能になっています。また、組立現場がライセンサー側の意図を理解できないこともありましたが、ノルトロックが間に入ってMANが意図している新しい締結の考え方を現場に伝えてくれたので、作業者の意識改革にも貢献してくれました。このようなサポートには大変感謝しています。」

舶用ディーゼルエンジンの世界トップメーカーである同社は、顧客である造船所のニーズに対応可能な幅広いレンジの機関が供給可能であり、それに合わせた製造体制を整えています。船全体を最適化することが最重要であるという考え方は、製品を販売する以上にボルト締結の最適化というトータルの目的を見据えるという理念を持つノルトロックにとって、非常に共感できるものです。多くの独自技術や最新技術を駆使しながらも、エンジンだけでなく船舶の建造全体が円滑に進行するような心配りを欠かさない点が、非常に印象深いお話でした。

海洋環境保全の取り組みや出港後のIoTを駆使した主機関モニタリングなど、船舶業界も日々進歩しています。技術革新という名の海では、その最前線で温かいハートを持った三井造船が、滞りなく確実に、業界をけん引しています。

1926年, MAN B&W社との提携開始頃。昭和初期から続くMAN社との舶用ディーゼルエンジン製造に関する技術革新協業は、世界トップとなった今でも続いています。

千葉県に試験設置された、世界最初のガス燃料式ディーゼルエンジン。発電用途であったが、ここから得られた知見が、独自技術の一つであるガス2元燃料式エンジンの礎となっている。

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FACTS

顧客：三井造船株式会社
製品：舶用2ストローク・ディーゼルエンジン
出力レンジ：5,300kW-82,000kW
サイズ：全長5.6m-23.2m×全高8.7m-15.4m
重量：180t-2,400t
回転数：58rpm～127rpm
採用製品：ノルトロックワッシャー