新たな採掘地を切り開く
北海のただ中で暴風雨に耐え得る十分な強さと安定を備えな がら、なお解体や再設置ができるほどの柔軟さを兼ね備えた 海洋ガスのプラットフォームを建設することは、不可能なことのように思われました。約6メートルもの長さのスーパーボルトを使用することで、ヘーレマ・ファブリケーション・グループ(Heerema Fabrication Group)は、世界で初めて成し遂げました。
F3-FA -ガスプラットフォームは、オランダから約240km離れた、北海のオランダ・セクターに位置しています。海上は、他の海洋石油・ガスプラットフォームのような外観ですが、1 つの大きな違いを誇っています。他のどんなプラットフォームとも違い、ガス田が枯渇した後、プラットフォームを廃棄処分にする必要がありません。一旦片付けて、別の場所に移動し、生産を続けるだけです。
この規模の解体・再設置が可能なプラットフォームが、こんな深い水中に建設されるなど、いまだかつてありませんでした。上甲板、4本のサクションパイルと脚を含む全体構造は、全高 133 メートル、重さ 8,800 トンに達します。強風や高波にさらされる沖合の深海に設置されています。
このプラットフォームの建設を請け負ったヘーレマ・ファブリケーション・グループ(HFG)は、延べ百万時間以上をこのプロジェクトの設計にかけたと推定します。その結果、エンジニアリングの驚くべき偉業、そして海洋石油・ガス産業全体を変えるようなことを成し遂げました。
ガスは、1970年代初頭に北海のF3-FA採掘地で見つかりましたが、パーマネントプラットフォームの建設を妥当とするにはガス鉱床が小さすぎたため、現在まで手付かずのまま放置されていました。業界の現在の経済モデルでは、ある特定の鉱床の価値がオフショアリグの建設コストを上回る必要がある、としています。
しかし、この再利用可能な新しいプラットフォームは、その寿命の間に複数の採掘地で使うことができるので、業界全体を変えると予想され、その波及効果は絶大です。突然、世界の比較的小さい油田・ガス田の利用が、経済的に実行可能なものとなったのです。
プロジェクトは、HFGがSIP(取外し可能なセルフインストール・プラットフォーム;クレーン船や重たい杭打ち設備を必要とせずに設置可能な海洋プラットフォーム)の建設を最初に請け負った 2009 年に始まりました。同様のSIPが以前にも使用されていましたが、浅く穏やかな海での小さめのプラットフォーム用のものでした。今回の新たな設備は、もっと苛酷な条件の中、もっと重たいプラットフォームを支える必要がありました。さらにその上、解体・再設置できるものとする必要がありました。
そこで、HFG はこの不可能と思えるタスクをどのように解決したのでしょうか。彼らのソリューションは、人類工学史上、最も単純で最も古い締結部材“ボルト”を使用する、というものでした。ノルトロックグループから提供されたのは、長さ 5.5 メートル、直径 24cm、重さ 2,000kg 超のボルトです。使用したナット型のスーパーボルトのテンショナーでも、重さは350kgを超えています。
「当社が提供したスーパーボルトは、溶接と同じレベルの安全性がありますが、溶接との違いは、迅速かつ簡単に装着できる点です」と語るのは、ノルトロックグループのサービスマネージャー、フランツ・レイマンです。「厳しい環境でもジャックボルトを保護する、特別密封設計を採用しました。1つのスーパーボルトのテンショナーに36個のジャックボルトがあり、その1つ1つが個別に密封されるので、腐食から保護され、潤滑油を保つことができます。そのため、ジャックボルトはまったく損傷を受けずに脱着可能で、全接続部を再利用できるのです」
かつて行ったことのない規模のプロジェクトにもかかわらず、ノルトロックのエンジニア達は、試験、計算、設置においてプロジェクトチームの支援も行いました。スーパーボルトには、いつでも荷重や軸力をチェックできるという、さらなる利点もありました。
脚を含む全プラットフォームは、陸上で建設された後、フラットトップのはしけで海上に輸送されました。F3-FAガス田に到着すると、脚が海底フロアに下ろされ、そこで4つのサクションパイルに固定されました。引張ジャッキを使って、プラットフォームをはしけから持ち上げ、脚上部に移動させました。定位置に配置されると、それぞれに12,000kNの軸力がかかる16個のスーパーボルト―各脚に4つずつ―が装着されました。装着されると、引張ジャッキが外され、4,000トンのプラットフォームがたった16個のスーパーボルトで支えられました。
はしけが到着した時からの設置にかかった合計時間は、たったの2日と4時間しかかからず、この規模の建設では極めてすばらしいものです。「他のどんな締結方法と比較しても、スーパーボルトがはるかに速くて簡単です」とレイマンは付け加えます。プラットフォームが固定されるまでは、はしけが荒天の影響を受けやすいという理由でも、迅速な設置は重要でした。
「スーパーボルトを使用すれば、設置プロセスを戻ることも繰り返すこともできます。ボルトが脱着・再利用可能であること、これが、再設置プラットフォームの真髄です」
HFG にとって、スーパーボルトは完璧なソリューションです。「ノルトロックのうまく設計されたスーパーボルトと優れた張力システムによって、革新的なF3-FAプラットフォームを実現することができました」と話すのは、HFG の F3-FA プロジェクトマネージャー、フランク・スランゲンさん。
現在、F3-FA プラットフォームは、この種の海洋プラットフォームとして唯一のものですが、全プロジェクトの成功とその可能性から、さらなるプラットフォームが建設されるのも間もなくのことでしょう。このようなアプリケーション要求にも応えることができることも示した証明済みのボルト締結ソリューションがあれば、ノルトロックが新たな依頼を受けることは間違いありません。
データ: ヘーレマ・ファブリケーション・グループ(HFG)
事業内容: 有数の請負事業グループ。海洋石油・ガス産業の大規模かつ複雑な構造物を得意とする。
所属: ヘーレマ・グループ
従業員数: 約 1,000 人
設立: 1948年
ビジネス面からの主張
- 迅速かつ簡単 - スーパーボルトは、溶接固定とは異なり、迅速な装脱着が 可能
- 再利用可能 - スーパーボルトは、損傷することなく脱着可能で、再利用できる。
- 保守 - いつでも軸力を管理できる。