【THE EXPERTS】ボルト再利用時の注意点

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ボルトは再利用するとなぜ問題が発生するのか

ボルトは、潤滑剤を使用せずに工場で取り付けられ、問題なく順調に使用できるはずです。しかし、問題が発生しないのは、ボルトが初めて取り外され、再利用される時までのことでしょう。再使用されるその時から問題が発生し始めます。

設計の段階において、エンジニアは締結部の軸力の範囲を設定します。(図 1を参照):そのため、部材が開いてしまったり、動いたりすることはなく、また降伏強度を超えないようになっています。摩擦係数は、適切な軸力を得るために必要な額面上のトルク値を算出するためのひとつの数値です。

ボルトの接触面は、表面が粗かったり、不均一であったりするため、最初の締め付け作業時に平らな状態になります。締結部材を再使用する際に何が起こるかと言うと、最初の締め付け時に接触面が広がったことにより摩擦が増加します。つまり、最初の締め付け時と同等の軸力を得るためには、より高い締め付けトルクが必要となります。再使用する際に、最初の推奨トルク値で締め付けを行えば、軸力は不足する結果になります。

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図1

潤滑油なしの締結

以下の図2のグラフは、M12のグレード8.8のボルトが一度締め付けられ、その後潤滑油を使用せずに再利用された数値を示しています。青で示されているのが、エンジニアが設定した軸力範囲です。初回締め付け時は、設定された軸力範囲内にあり、すべて順調に問題なく動作します。しかしながら、摩擦の影響により、必要な軸力を得るためには、初めての再使用の際により高い締め付けトルクが必要になります。例をあげると、製造元から出荷されて以来正常に動作してきた機械があるとします。その後最初のメンテナンスのオーバーホールが1年後に行われるとします。ボルトを再利用する際に、メーカーの指示に従い適切であるとされているトルク値で締め付けると、それによって得られる軸力は、エンジニアが最初に設定した範囲に到達しません。このようにして問題の発生が始まります。軸力が低すぎると、部材がスライドし始めることがあり、締結部の緩みやボルトの破壊につながります。

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図2(左)、図3(右)

まとめ

適切な潤滑油を使用せず締結部材を再利用することには、かなりのリスクが伴います。時間がかかるため、潤滑油の使用を省きたいと考えるかもしれません。あるいは、例えば衛生上の理由などから潤滑油の使用が不可能な場合もあります。しかし、初回取り付け時から、潤滑油なしでの最初の再利用の場合には軸力の低下の幅が非常に大きく、その差が大きく異なる可能性があることに注意することが重要です。つまり達成される軸力を正確に予測することは不可能です。潤滑油を使用しない場合は、締結部材を再利用するのではなく、毎回交換するのが無難でしょう。締結部材を再利用する場合は、安定化することのできる潤滑油の使用を強く推奨します。また、ボルトはきれい洗浄し、使用するのと同じ潤滑油で再潤滑することが重要です。この作業をすることにより、摩擦条件が元の条件に戻り、設定されている範囲内の適切な軸力を維持することができます。(図3参照)


潤滑油を使用し始める場合には、その摩擦条件と値に合った適切な締め付けトルクに調整されていることを確認してください。ご質問等サポートが必要な場合には、ノルトロックジャパンまでお問い合わせください。