【THE EXPERTS】フックの法則とボルト締結の基本

Q: フ ックの法則とは何ですか?また、なぜそれがボルト締結にとってそれほど重要なのでしょうか?

A: ボルト締結の分野では、フックの法則は締結の精度に関わってきます。

締結時、ボルトに何が起こっているのかを見てみると、軸力はボルトを引き伸ばす力と反対方向に作用します。ばねを伸ばす時に例えると、軸力はばねを引き伸ばす力と逆方向に働く、元に戻ろうとする力です。ボルトを締め付けていくと、この双方向への力は同時に大きくなっていきます。

フックの法則では、降伏点に至るまではボルトの伸びに対して弾性的な挙動を示す。軸力が弾性限界を超えるとボルトは破断に繋がる塑性変形を起こしてしまう

フックの法則は「力は伸びに比例する」ということを表したものですが、降伏点に至るまでは、ボルトの挙動が弾性的なものとなることを示しています。つまり、ボルトの伸びの大きさは、軸力の大きさと正比例するのです。この関係性は単純なようにも思えますが、確実なボルト締結を行う上で、キーポイントになってきます。

軸力が降伏点を超えていなければ、ボルトを取り外せばボルトは元の長さに戻ります。弾性域内でのこの挙動は、ボルトの性質上極めて重要なものですが、もし軸力が弾性限界(降伏せず安全に使用できる範囲)を超えてしまった場合、ボルトの破断に繋がる塑性変形が起こってしまいます。

フックの法則は、17世紀の物理学者、ロバート・フックによって提唱され、ボルト以外にもばねやベアリング等の機械要素を適正に扱うためのガイドラインとなっています。事実、フックの法則はあらゆる弾性体に広く適用できるため、極めて多種多様な分野で設計に用いられているのです。