【THE EXPERTS】耐疲労性の向上
Q:耐疲労性をどのようにして向上させていますか?
A:ボルト締結部の疲労許容量は、その静的容量に比べて非常に小さいものです。設計者は、耐疲労性を向上するために、ねじ部の強度を上げるか、ねじ部の両振り応力を下げる事を考えます。
ねじ部の強度を上げるには、切削工程の代わりに、転造ねじの使用を推奨します。ボルト締結部の許容量を増加させるためには、1つの大きな締結部材を使うのではなく、より小さい締結部材を複数使ってください。
許容量が大きく、ねじ山への荷重を分散し、ボルト締結部に弾性力を加える事のできる、スーパーボルトMJT(マルチジャックボルト・テンショナー)やフレックスナットなどの改良された製品を使用する事でも増加させる事ができます。
耐疲労性を向上する最も良い方法は、ねじ部の両振り応力を減少させることです。これには主に3通りの方法があります。作業に関する設計、締付作業、そして作業時の安全確保です。
作業に対する設計においては、ボルト締結部の荷重分散ができたり、締結部に対する外力の割合を下げる事ができます。これを促進するために、以下の原則を覚えておきましょう。
- 可能な限り高い軸力を使用する
- 偏心荷重の為にボルトをできるだけ小さくする
- 可能な限り接触面を大きくする
- 可能な限り大きい締結長さを確保する
- ほとんどの場合において、使用荷重より大きい軸力を確保する
他の作業に対する設計オプションとしては、リラクセーション、クリープ、熱による収縮の作用に対抗する弾性ワッシャーの使用、ネックダウン・スタッドやボルトの使用などがあります。
締結作業に関しては、必要な軸力に到達することが、両振り応力を減少させる重要な要素です。高精度の較正工具の使用が推奨されます。軸力の精度を達成し、かじりのリスクを減少させるためには、正しい潤滑剤を使用することも推奨されます。不均一な荷重がボルトにかかるリスクを軽減し、全体のボルト締結の完全性を確保するためには、適正な締付手順を使用する必要があります。
締結部の安全確保については、軸力の損失からボルト締結部を守ることが推奨されます。さらに、疲労亀裂を引き起こしかねない腐食などの環境影響から、締結部を守ってください。これは、部品や締結部材に対し、適正な材料やコーティングを選定することで実行できます。