【THE EXPERTS】正しい材料の組合せって?
Q: ステンレスのノルトロックワッシャーを鉄(鋼)のボルトに使用できますか?
A: イエス。ねじのピッチにおいて、ステンレス製ボルトと鉄(鋼)製ボルトに違いは無いので「ノルトロックの機能上は」使用できます。ですが、最善の方法は全てのパーツを同じ材質で統一して締結することです。なぜなら、もし、ステンレス製のノルトロックワッシャーを強度区分10.9 や12.9 といった鉄製の高強度ボルトに使用した場合、強度の違いによってワッシャーが変形してしまう恐れがあります。ステンレス製ワッシャーは表面層だけを硬化させており、高強度の鉄製ボルトを高軸力で締結すると、ワッシャー内部の比較的軟らかい部分が塑性変形を起こす可能性があるのです。ノルトロックステンレス製ワッシャーの機械的性質として、鉄製の強度区分8.8 相当の強度となるため、強度区分8.8 かそれ以下の鉄製ボルトには、ノルトロックステンレス製ワッシャーは問題なくご使用いただけるでしょう。
もう一つ、忘れてはいけないことがあります。ノルトロックステンレス製ワッシャーと鉄製ボルトの組合せを設計する場合、特に「ガルバニック腐食」と呼ばれる異種金属間の電位差による腐食(通称:電食)に配慮しなければなりません。ガルバニック腐食は、異なる金属材料が水を含めた通電性のある液体中で接すると発生し、金属を劇的に劣化させてしまいます。ガルバニック腐食が起こると、一方の金属はアノード電極(電池で言うプラス極)となって腐食スピードが加速され、他方はカソード電極(電池で言うマイナス極)となり通常より腐食スピードは遅くなります。ノルトロック鉄製ワッシャーには、この原理を応用したデルタプロテクト(亜鉛フレークコーティング)が施されています。