【エキスパート】締結時と取外し時でトルクが変わるのはなぜ?
取り外す時の必要トルクが締め付け時の必要トルクより小さいのはなぜでしょうか?
ボルト・ナットを締結する時には、ナットやボルトの首裏、ねじ山等で発生する摩擦を超えるトルクで締め付けないと軸力が得られません(図1A参照)。
ボルト締結は、よく坂道に例えられます。ボルトを締め付けるということは、ねじ山と同じ角度の坂道に置いた荷物が坂道を上って行くことと同じで、逆に緩めるということは坂道を滑り落ちて行くことと同じです。上る時にも下りる時にもボルト・ナットに摩擦が発生するものの、下りる時には上る時のように「ねじ込むための力」が不要になります。これが、取り外しの時に必要なトルク量が締め付ける時よりも小さくなる理由です。
しかし、この法則にも例外があります。摩擦係数はその都度、様々な理由から変動するため、摩擦係数の変動が大きくなる方に働けば、取り外しの際に締結時以上のトルクが必要になる可能性もあります。表面の粗さや錆、かじり・焼き付き等あった場合、摩擦係数はかなりの幅で上昇するため、取り外しに必要なトルク量も跳ね上がってしまうのです。
ノルトロックワッシャーを取り付けた締結体でも、締結時と取外し時のトルクには相当量の差が出ます。締め付ける際には、ノルトロックワッシャーのセレーション面の歯が、ボルトの首裏またはナット表面をスライドする形となるため、必要トルク量には若干の上昇があります。一方で、取り外しの際にはセレーション面の歯はボルト・ナット表面と相手材にグリップしているため、スライドするのは内側のカム面の間となります。ノルトロックワッシャーのカム表面はフラットであるため、摩擦係数は非常に低いものとなります(図2参照)。
これはノルトロックワッシャーのキーポイントのひとつです。その理由は、回転緩みを許さないという機能をもちながら、締め付け時以下のトルクで取り外しができるため、メンテナンス時に手間取ることがないということです。作業性が向上すれば、ダウンタイムの短縮に繋がり、その分の設備機器停止による機会損失を軽減できます。ノルトロックワッシャーの大きなメリットは、まさにこの点にあるのです。