【エキスパート】ボルトのシャンク(柄)部は何のため?
ボルトのねじが切られていないシャンク(柄)部は何のため?
ボルトヘッドとねじ部の間のにある、ねじが切られていない円筒状の部分。この部分をシャンク
(柄)部と呼びますが、このシャンク部の使い道は大きく分けて2つあります。1つはシャンク部を
設けることで、せん断応力の許容量を拡大できること。もう1つはシャンク部を小さくすれば締結体の
弾性力を向上できることです。
ボルト軸に対して垂直方向(せん断方向)の荷重下(図を参照)では、ボルトには当然ながら軸に
対して垂直方向(せん断方向)の荷重を受けます。せん断荷重に晒された際、ねじ部ではねじ山に
応力が集中してしまいますが、シャンク部ではより大きな面積で荷重を受け止めることができるため、
せん断荷重の許容量という点で、ボルトの性能を向上できます。この点を考慮すると、設備機器の
設計者は、せん断方向の荷重がねじ部ではなく、シャンク部にかかるよう設計を行うことが望ましい
と言えます。
一方で、弾性力に関するシャンク部の役割についてのお話ですが、ボルトは締結力となる軸力を得る
と、引張方向の荷重下で使用されることになります。ボルトはこのような引張荷重下では、被締結材
以上の弾性を持っている必要があります。これが高強度ボルトになると、その高い硬度の裏返しと
なる弾性の無さを補うため、シャンク部を最小限まで小さくしてねじ部の割合を増やすことでボルト
の弾性力を確保します。ボルトを偏芯させるような荷重等、周期的な曲げ応力が原因となってボルト
が破損した場合には、シャンク部が”くびれ”たような細いシャンクを持つボルトに取り替えることで
弾性力を向上させ、ボルト締結体の機能を向上させることができます。”くびれ”によって径が小さく
なっているために同じ条件下でも実際に受ける疲労ストレスは低減され、結果として締結体の寿命は
より長くなるのです。これは多くの設計者・技術者に見過ごされている非常に実践的な知識です。
ボルト締結部の設計を改善した結果、メンテナンスコストや修繕費の削減に繋がるという流れは
非常にありふれたシナリオであり、ノルトロックのテクニカルサポートがお客様にご提案できる最も
実践的なメリットのあるサポートでもあります。
最後に、ボルトのシャンク部にはまだ別の利点があります。例えば、長いボルトを製造する際には、
シャンク部を大きく取ってねじ部を減らして加工プロセスを簡素化し、製造時間とコストを削減する
ことができます。その結果、長いボルトもリーズナブルな価格で大量生産され、お客様の手元に届け
られることになります。