安全なボルト締結を実現する10のヒント

最高の安全性と信頼性を持ったボルト締結を実現するためには、多くの要素を考慮する必要があります。本稿ではお客様が最高の締結を実現するために役立つ10のヒントを、これまでにBOLTEDマガジンで紹介して来たノウハウから厳選し、ご紹介します。ですがこれらは特定の締結部に関するアドバイスではなく、一般論としてお楽しみください。

1: サイズと強度区分「ボルトサイズと強度区分の適切な選定」

ボルト締結に関しては、大きいことは必ずしも良いことではありません。同様に、等級の高いボルトが等級の低いボルトにとって自動的に優れているというわけでもありません。重要なのはこれら2つの要因の組み合わせです。

「誰もが適切なボルトのサイズと適切な材料を選んだとしたら、ボルト締結の特別なソリューションは必要ないに違いありません。」と語るのは、boltscience.comの創設者のビル・エクレズ氏です。

エクレズ氏は、ボルトのサイズと強度等級は、ボルトの負荷にポジティブにもネガティブにも影響しうると説明します。一旦適切な組み合わせで締結部を正しく締め付けた場合、ボルト締結部を安全に維持するのに重要な要因となるのは、その負荷そのものです。「より大型のボルトと等級のより低いボルトを組み合わせたり、より小型のボルトを等級のより高いボルトと組み合わせて使用することも可能です。 いずれの場合も適合する可能性があります。」このように重要な設計オプションの考慮が必要な場合は、ノルトロック社のエンジニアたちにご相談ください。喜んでお手伝いさせていただきます。

2: 非回転緩み「非回転緩み緩和のため、弾性力のある締結を設計」

非回転緩みはボルトが緩む主な原因の1つです。その原因として、主に次の3点が挙げられます。①ざらざらしていたり、でこぼこの表面で発生するなじみ。②ポリマーや複合材料などの材料が収縮することで発生するリラクゼーション。③応力や高温の影響下で、材料が移動したり変形したりする傾向であるクリープ。これらのいずれもが、軸力の喪失を引き起こし、ボルト接合部の不具合に繋がる場合があります。

非回転緩みは今日、ますます大きな問題となってきています。ボルト接合部がかつてない高温や負荷にさらされている一方で、構成部品の材料が複合材料やプラスチック、アルミという場合が増えてきているからです。

ノルトロック・スイス社のセールスエンジニア、ロビン・センは、2段階の解決策があると言います。「非回転緩みを緩和させるには、滑らかで硬質の表面が必要な一方、ボルト接続部に弾性をもたせなければなりません。これには、ノルトロックXシリーズワッシャーやスーパーボルトのマルチジャックボルト・テンショナーが有用です。」
スーパーボルトのマルチジャックボルト・テンショナーは、ノルトロック社のマルチウェッジロッキング技術同様、ボルト締結部の弾性を増強し、非回転緩みを最低限に抑えます。

3: 潤滑油「使用環境に合った潤滑剤の選定・使用」

ボルト締結部に関する潤滑剤の重要性は、誇張してもしすぎるということはありません。潤滑剤は摩耗の散発を最小限に抑え、トルク‐負荷の分配を軽減するばかりでなく、取付けや取り外しの作業を容易化し、ボルトの寿命を延ばしてくれるからです。

米国ノルトロック社のフィールドアプリケーション・エンジニアのヒデノリ・アラキは、ボルトヘッドやナットの下部およびボルトの噛み合わせたねじ山の上に潤滑剤を塗ることを推奨します。

「潤滑剤に関して認識しておかねばならない何よりも重要なことは、アプリケーションに適切な潤滑材を選択するということです。考慮に入れるべきパラメータとして、化学成分、健康と環境に対する影響、使用温度範囲、摩擦係数が挙げられます。推奨使用法に関しては、潤滑剤の製造元に確認してください。」

4: 設計と保守「製造原価だけでなく維持費も重視する」

プロジェクトの設計段階でありがちなジレンマに、現時点でより経済的なソリューションを採用して費用を低く抑えるべきか、より高い品質のソリューションに投資して長期的なコスト削減を図るべきかという問題があります。

シーメンス・インダストリアル・ターボマシーナリー社の研究開発プロジェクト管理部長のマーティン・リンドベック氏は次のように述べています。「初期費用のみを重視してはいけません。早い時期に適切な投資を行えば、後に巨額のコスト削減を図ることが可能になります。この姿勢はまた、お客様の満足度向上にも繋がります。」

シーメンス社は、何百万ユーロに上るガスタービン専用のボルト締結ソリューションに関し、長期的な視点で取り組み、ノルトロック社製のロックワッシャーとスーパーボルトのテンショナーへの投資を行いました。これにより、組み立て中のコスト削減のみならず、タービンのライフサイクル全体に及ぶ保守費用で、巨額のコスト削減を実現することができました。

5: コーティング「コーティングによって解決できる問題は多い」

わずか数ミクロンの薄さのコーティングですが、締結部材の性能をさまざまな方法で改善してくれる場合があります。腐食の防止や、摩耗の軽減、美的価値の向上などがそれに当たります。コーティングのソリューションは幾種類もありますが、最も費用効果が高くシンプルなのは亜鉛メッキです。亜鉛メッキで十分でない場合は、亜鉛合金を使用できます。さらに徹底した保護が必要な場合には、多層亜鉛フレークが推奨されます。

では、お客様のアプリケーションに選択すべきコーティングはどれでしょう?ノルトロック社オイル&ガスのグローバルフィールド・エンジニアのシャーバ・マドルは、コーティングの特徴の中でも、重視すべきものがいくつかあると言います。「コーティングを選ぶ際に第一に考慮すべき点は、耐食性のレベルです。次に必要とする耐摩耗性は潤滑油で補うことが可能です。そして最後に、美観ですね。」

6: 安易に模倣品を使用しない「安価な模倣品は結局後々のコストを増やす」

スニーカーからスマートフォンまで、安価な複製品や模倣品はちまたに溢れています。ボルト製品もその例外ではありません。ノルトロックワッシャー等の純正品に投資する利点は、長期間に渡って市場に存在し、その性能や品質が実証されている製品を得られることに他なりません。

ノルトロックの純正品はレーザーマークで確認できます。本物を購入したかどうか不安な場合は、ノルトロックジャパンまたは正規取扱店までお問い合わせいただければ、照合のお手伝いをさせていただきます。

「人生で起こる数多くのことと同じように、ボルト締結でも手にする結果は投資する金額に見合ったものになります。」と語るのは、ノルトロックテクニカルセンター部長のフリーダ・クリンです。「純正品の金額は模倣品より高価かもしれませんが、長期間に及ぶ信頼性を得られるだけでなく、保守や修理のコストを削減することが可能です。」

7: 品質「確かな専門知識を持つパートナーを選ぶ」

何千と存在する締結ソリューションですが、一定のアプリケーションに幅広く使用されているソリューションが、特定の温度や圧力の範囲内に関しては適用できないというケースもあります。高い材料信頼性の実現と、適切な締結の選択に手を貸してくれるパートナーを探すことが何よりも重要です。

ボルト・セキュアリング社のペーター・フィヨルドマン氏が次のように語ってくれました。「リコールやブランドのイメージダウンによるコストは相当なものになります。例えば、換気装置の漏水による事故に関する記事を読むと、その会社が不適切な締結システムを選択していたのが原因ではないかと気になります。

目先の利益を追求するより品質の優先を重視する、専門知識に定評のあるパートナーとの取引のみが、高い品質の実現を可能にしてくれると言っても過言ではありません。」

信頼性に定評のあるノルトロック社は、海洋・エネルギー・運送関連などの、要求の高い各種アプリケーションに対する品質証明や認証評価を数多く有しています。

8: サビ/腐食「締結部設計の初期段階で対応しておく」

この世で確実なのは、死と税金のみと言われています。ここに3つ目を付け加えるとすれば、それは腐食です。スチール製をはじめとしたあらゆる金属製品は、酸素と水分に接触すると次第に錆びて分解されます。「腐食はある一定の時期に間違いなく発生します。」と語るのは、マイクロレイヤー防食システムの開発を手掛ける、デュルケンMKS-システム社のクリスチャン・ラーベ氏です。「しかしながら、その進行を妨げる方法がいくつかあります。」

1つの方法は、亜鉛などの価値の低い材料が犠牲となるカソード防食です。もう1つの方法は非カソード防食です。ラーベ氏は、腐食に関しては簡単な答えは存在しないと言います。「唯一の解決策と言えば、危険にさらされている部品を極乾燥状態の砂漠気候で保管することでしょうね。」と冗談を交えます。

ノルトロック社は幅広い種類の耐腐食性コーティングや表面処理はもちろん、さまざまな等級のステンレス鋼やニッケル基合金を提供しています。

9: 再使用時の注意点「ボルト・ナットの再使用時には潤滑油を使用」

「再使用すべきか否か」。これはしばしば提起される問題です。締結部材の再利用は、サイズや等級がさまざまの交換部品を持ち歩くよりも便利な上、より経済的でもあります。

しかしながら、中古の締結部材に損傷があり、機能しなくなるかどうかを見極めるのは至難の業です。再利用する予定のボルトが役割を果たせるかどうかの確認方法に関し、ノルトロックグループのアプリケーションエンジニア、レナ・カルミコワは、目視検査を推奨しています。「腐食の兆候が見える場合は、可能な限り再利用を避けてください。これは目に見えるねじ山の損傷に関しても同様です。」

「しかしながら、たとえボルトに損傷があっても、一時的な解決策として再利用するほか手段がない場合もあります。再利用が必要な場合には、潤滑剤を使用してください。腐食に対する保護として、若干の機能を果たします。また、ねじ山に損傷がある場合は、潤滑剤を使用することにより、新しいボルトを取り付けるまで、必要な締付荷重を実現する手助けとなります。」

10: 軸力と締付作業「締付工具と手順で精度は格段に変わる」

軸力はボルト締結部の機能を決定付けるものです。従って、締結部に必要な軸力レベルを設定して適切な締付方法や正確な締付手順でそれを達成することが重要です。

軸力は被締結材間の滑りや遊離を防ぐのに十分で、尚且つ締結体を構成する各パーツの降伏点以下でなければなりません。これは相手材の陥没やねじ山が破断を避けるためには不可欠です。

ノルトロックフランスのシニアテクニカルエキスパート、ズハイル・シャイブは、ボルトの機能を静的・動的両面で区別することも重要だと語ります。ボルトは高い静的負荷に対する耐性はありますが、動的負荷に対する耐性はごく僅かだからです。従って、締結部に伝わる動的負荷による影響を軽減するためには、高い軸力を発生させることが求められます。
「締付時には、設計者が指定した軸力を達成できる適切な工具と正確な締付手順が必要です。」とシャイブは語ります。

ノルトロックグループのエンジニアたちは、設計・製品選定・フィールドサポートを含めて、お客様のボルト締結部をベストなものにするためあらゆるサポートを行っています。

これは一般的アドバイスであり、ボルト締結のあらゆる状況に適用できるわけではありませんのでご留意ください。

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