【THE EXPERTS】ボルトはなぜ緩んでしまう?

Q: そもそもボルトはなぜ振動等に晒されると、緩むのでしょうか?

A: ボルトの緩みが発生する原因として最も多いのが振動や変動荷重によるものであるため、これは非常に重要なテーマです。ボルトは締め付けられると弾性をもって引き伸ばされます。ちょうどバネと同じように、引き伸ばされたボルトには、同時に元の状態に戻ろうとする力が働き、これが締結力である軸力となります。

この元の状態に戻ろうとする力ですが、元の状態に戻るには、ボルトは戻り回転を起こすしかありません。軸力を無くしてしまえば、引き伸ばされたボルトも元に戻るからです。

しかし、ボルトやナットは相手材との間、いわゆる座面とねじ部に摩擦が発生しており、この摩擦がボルトの戻り回転を防ぐ形で抵抗として作用しています。ボルト締結体に振動や変動荷重が加えられた際には、先述の座面やねじ部も連動して滑りを起こしてしまう可能性があります。動的摩擦係数は常に静的摩擦係数よりも小さくなるのがその理由です。軸力が振動や変動荷重等の外力に負けてしまう瞬間ですね。

こうなってしまうと、もはや摩擦によって戻り回転を阻止することは難しくなってしまいます。戻り回転を起こす回転緩みの原因として最も多いのは振動や変動荷重だと言いましたが、このように接触面で発生する滑りの直接的な要因になってしまうからです。反対に言えば、軸力が外力よりも大きく接触面で滑りが起こらない場合は、ボルトは緩み回転を起こすことができません。理論的には、そのような緩む環境にない場合はノルトロックワッシャーを含めて緩み止め製品を使用する必要はないのです。

※ボルトの回転緩み発生のメカニズムは、JapanBOLTEDに掲載のボルト締結の権威、工学博士・酒井智次先生のインタビュー記事にて更に詳しくお楽しみいただけます。