風力発電所のパフォーマンスの向上:ボルト締結体の軸力モニタリング
インフラの運用と安全にとって、確実にボルトが締結されていることは不可欠ですが、 ボルト締結部が適切な軸力で締められ、締結が維持された状態であることは難しい課題とも言えます。浮体式洋上風力タービンが大型化し、過酷な環境や浮動プラットフォーム上で使用されるにつれ、ボルト締結部はサイズやボルト本数が増し、設計や取り付け、メンテナンスが複雑化しています。
トルクレンチや超音波測定により軸力を確認する従来の方法は、時間がかかるうえ、また精度に欠けることがあります。現在では、スマートテクノロジーの進歩により、締結部にセンサーを設置し、軸力を遠隔でモニタリングできるようになりました。クラウド経由でデータを送信し、スマートフォンやコンピュータのダッシュボードから読み取ることができます。例えば、MP-TP フランジ接続の軸力を完全にコントロールすることも可能です。
この記事では、ノルトロックグループのスマートソリューションであるスーパーボルト・ロードセンシング・テンショナー (LST) およびスーパーボルト・ロードセンシング・フレックスナット (LSF) の、風力発電産業における、ボルト締結部のモニタリングで果たす役割に焦点を当て、風力タービンの安全性、効率性、パフォーマンスの向上にどのように役立つかについて説明します。
軸力のスマートモニタリングについて
スーパーボルト LST は、スーパーボルト・マルチジャックボルト・テンショナー (MJT) の技術をベースに、ナットボディの下部にひずみゲージセンサーを設置しています。軸力を高めたり低めたりすることにより、軸力とナットボディ外径は増減し比例関係(線形)となり、その値は測定することができます。
軸力の遠隔モニタリングにご興味をお持ちの方が、この製品をご使用いただくにあたり、専門的なスキルや知識は必要ありません。接続するだけですぐに使用できるプラグ・アンド・プレイシステムにより、作業オペレーターは、設置またはメンテナンス中に携帯端末で軸力を読み取ることができます。アプリケーションの運転期間中であれば、システムを取り付けたままいつでもデータを送信することができます。風力タービンのWifiやSIMカードによるネットワークラジオから、軸力のデータを世界中どこでも PC やスマートフォンからモニタリングできます。
スーパーボルト LST は、どんな場所にも取り付けることができます。ノルトロックグループでは、洋上設備で採用するためのサポートなど、世界中どこでも、あらゆる形でお客様をサポートします。
スーパーボルト LST/LSF で収集した軸力データの活用方法について
ノルトロックグループのスマートソリューションは大容量のデータを収集・保存できることが大きな特長です。収集したデータを分析し、傾向やトレンドを把握することができます。
1. 遠隔モニタリング:軸力は、設定した任意の間隔(最大 100 回/秒)で自動更新されるため、特に遠隔地や、アクセスが困難な場所にあるタービンに最適です。世界中のどこでもリアルタイムに画面上でモニタリングできます。
2. 予知保全:時間の経過による軸力の変化をデータから把握し、故障の可能性を特定し、メンテナンスチームに予防保全を行うようアラートを通知することができます。
3. アラートと通知:軸力が事前に設定した範囲を超えた場合、自動通知を設定しておくことで、メンテナンスチームが迅速に対応し、ダメージを防ぐことができます。
4. 過去のデータ分析:海抜データ、風速、その他の気候条件のほか、保存された軸力データを用い、過去に発生したメンテナンスのインシデント等に対し、トラブルシューティングを行います。
5. 研究開発:軸力データと気候条件を、今後の風力発電の開発や、新しいタービン設計の技術革新に活用することができます。
これらのデータを使うことで、 ボルト締結部に起こった問題をより詳しく理解することができます。ノルトロックグループのエンジニアのピーター・クラウゼンは、これは風力発電業産業に限ったことでないと述べています。
軸力のモニタリング箇所について
スーパーボルト LST/LSF は、風力タービン内のほぼすべてのボルト締結部の軸力をモニタリングすることができます。これらの製品は主に、大きな負荷がかかるタワーボルトやブレードハブボルト、ベアリング押さえボルト、アンカーボルトなどのフランジ締結部にご使用いただけます。
「運転中に大きい動的荷重がかかるローターブレードの接続部に適用することは、非常に効果的な使用方法と言えます。多大なメンテナンス費用がかかり、アクセスが困難な場所において、LSTは最適です。」とクラウゼンは言います。
このように軸力を IoT で遠隔からモニタリングする方法は、機器の操作と安全性の観点からボルト締結が重要な役割を果たすすべての産業に適用できます。他の発電産業のみならず、石油・ガス、建築、鉄道インフラ、製造、採掘業をはじめ、あらゆる産業で非常に大きな可能性を持っています。
スーパーボルト LST/LSF を使用するメリットとは
正確性:トルクを確認することで、ボルトが緩んでいるかどうかが分かります。スマートソリューション(スーパーボルト LST)は、±5% の正確性で軸力の値を測定します。
安全性:1984 年に最初に発売されたスーパーボルトがベースのマルチジャックボルト・テンショナー (MJT)は、特殊なスキルや重い工具を必要とせずにボルト締結部を高精度で締め付けることができます。
費用対効果:「予防は治療よりも安い」
スーパーボルト LST や LSF は、フランジ接続部の周囲に一定間隔で取り付けることができます。お客様のインフラを長期的な観点で、より安全な設備保全を実施するため最新かつ信頼のおける情報をもってモニタリングすることができます。そして、より効率的にメンテナンス計画を立てることも可能になります。
スケール調整:ノルトロックグループのスマートテクノロジーを、専門エンジニアと共同でテストします。お客様のアプリケーションサンプルで実証テストを行い、重要な資産に対応できるようにスケールアップします。
収益性:信頼性の高い構造モニタリングにより、風力発電所やその他の事業のライフサイクルを伸ばすことができます。
周辺設備への影響:一般的なモニタリングや測定方法は接触式ですが、スーパーボルト LST はボルト締結部はそのままの状態で、何かを加工したり計算に変更を加えたりする必要がありません。
簡単な操作:ノルトロックグループのスマートプロダクトは、ほとんどの製品が接続するだけですぐに使用できるプラグ・アンド・プレイソリューションで、取り付けやモニタリングを始める際、世界中どこでもトータルサポートを受けることができます。
連続稼働:LST と LSF は無人で稼働できるため、負荷を動的にモニタリングすることでボルトの疲労や破損を防止できます。
ケーススタディ:北海における軸力モニタリング
ノルトロックのグループエンジニアでオフショアのスペシャリストであるピーター・クラウゼンが、軸力の遠隔モニタリングのグローバルな可能性と、ドイツ北海でのスーパーボルトLSTの取り付けの成功事例について解説しています。動画でご覧ください。
軸力の遠隔モニタリングシステムを導入すると、構造的なメンテナンスやインフラ設計の可能性をさらに広げることができます。現在ノルトロックグループは、スマートソリューションにより安全性を高め、より効率的なメンテナンス計画の立案、タービンの全体効率を向上させるため、風力発電業界を積極的にサポートしています。これらの基本的な理念と経験は、世界中の産業に適用されています。